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ストレスチェック後の産業医面談は義務?概要や流れ・注意点を解説 


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常時使用する従業員が50人以上の事業場では、ストレスチェックが義務付けられています。ストレスチェックの結果、高ストレス者と判断されて面談を希望した従業員には、産業医面談が必要です。

しかし、そもそもストレスチェックや産業医面談はどのようなものか、どのような流れで行えばよいのか、わからない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、ストレスチェックの概要、ストレスチェック後の産業医面談の流れと注意点を解説します。

目次

  1. ストレスチェックとは
  2. ストレスチェックから産業医面談までの流れ
  3. ストレスチェック後の産業医面談とは
  4. ストレスチェック後の産業医面談の進め方
  5. ストレスチェック後の産業医面談の注意点
  6. オンラインでの産業医面談の留意点
  7. (まとめ)ストレスチェック後の産業医面談を行い、生産性を高めよう
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1.ストレスチェックとは

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ストレスチェックとは、職場のストレス要因、心身のストレス反応など、従業員のストレスを調べる検査です。労働安全衛生法により、従業員が50人以上いる事業場では、年に1回実施することが義務付けられています。

ただし、従業員が50人未満の事業場の場合、ストレスチェックの実施は努力義務とされています。

なお、労働安全衛生法第66条の10では、以下のように示されています。

"事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。"

出典:e-GOV法令検索「昭和四十七年法律第五十七号 労働安全衛生法

ストレスチェックの目的

ストレスチェックは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防止するために行われます。従業員のストレスの度合いを把握し、従業員自身のストレスへの気付きを促すとともに、ストレスの原因となる職場環境の改善に繋げ働きやすい職場を作ることを目的とします。

従業員自身が自分のストレスの程度を把握することで、精神的負担を抱えすぎないよう対処しやすくなるでしょう。ストレスが高い場合は、医師による面談を行いセルフケアについてアドバイスしたり、会社による必要な措置や職場環境の改善に取り組むことが必要です。

ストレスチェックの実施者・実施事務従事者

ストレスチェックの実施者は、労働安全衛生法で定められた医師(産業医)、保健師、厚生労働大臣が定める研修を修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士もしくは公認心理師に限られます。

実施者とは別にストレスチェックの実施事務従事者も存在します。実施事務従事者はストレスチェックの回答回収など実施者の補助を行います。実施事務従事者に特別な資格は必要ありませんが、ストレスチェック対象者の人事権者がなることはできません。

実施者は必要に応じて実施事務従事者を指名できるため、実施者の負担を軽減したい場合には活用することも1つの手段です。

ストレスチェックの対象者

常時50人以上の従業員を使用する事業場において、ストレスチェックの実施義務があります。この場合の従業員とは、パートタイムや派遣の従業員も含まれます。

とはいえ、全ての従業員に対してストレスチェックを受けることが義務付けられているわけではありません。法律で義務付けられているのは、あくまで「事業者がストレスチェックを実施すること」です。従業員の受検が任意であるのは、メンタルヘルス不調の従業員にとっては受検の負担が大きいと考えられるためです。

このように、特別な理由がある場合までストレスチェックを強要する必要はありませんが、ストレスチェック制度を効果的なものとするためにも、全ての従業員が受検することが望ましいとされています。

ストレスチェックの内容

ストレスチェックでは、従業員に対し、以下3つの項目について質問します。

  • 職場のストレス要因
  • 心身のストレス反応
  • 周囲のサポート

回答結果は、医師や保健師などの「実施者」から従業員本人に直接通知されます。回答者本人の同意がないにもかかわらず、結果を事業者に提供することは禁止されています。

2.ストレスチェックから産業医面談までの流れ

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ストレスチェックの流れは、主に以下の3ステップで行います。

  1. ストレスチェックを実施する
  2. 従業員へ結果を通知する
  3. 産業医による面談を実施する(対象者のみ)

それぞれ解説します。

1. ストレスチェックを実施する

まずは、従業員に対してストレスチェックを実施します。以下の3つに関する項目を含んでいれば、調査票の指定はありません。

  • 職場のストレス要因
  • ストレスによる心身の自覚症状
  • 従業員に対する周囲のサポート状況

職場で自作してもよいとされていますが、以下、厚生労働省のストレスチェック実施プログラムを活用するのもよいでしょう。

参照元:「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト

2. 従業員へ結果を通知する

ストレスチェックを実施したら、実施者は従業員に結果を通知します。ストレスチェックの結果、高ストレス者に該当する場合、産業医による面談が必要かどうかも通知します。

3. 産業医による面談を実施する

ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定され産業医による面談が必要と判断された従業員のうち、従業員から申し出があった場合、産業医による面談を実施します。

面談は、以下の点に留意することが大切です。

  • 勤務時間内に実施する
  • プライバシーが保たれ、リラックスできる場所で実施する
  • 面談にかかる費用は事業者が負担する

事業場以外で面談を実施する場合、移動時間にも配慮しましょう。面談後、事業者は産業医の意見を聴取し、労働時間の見直しや休職など、就業上の措置を講じることが求められます。

3.ストレスチェック後の産業医面談とは

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ストレスチェック後の産業医面談とは、受検の結果、高ストレス者と判定された従業員に対して実施する面談のことです。

産業医による面談は、従業員の心身の状態、ストレスやメンタルヘルス不調の要因となりうる状況を確認し、事業場に対して意見を述べ、メンタルヘルス不調などのリスクを未然に防ぐ目的があります。

ストレスチェック後の産業医面談によって、従業員が健康に働ける職場環境の整備につながり、結果として生産性・パフォーマンス向上が期待できるでしょう。

4.ストレスチェック後の産業医面談の進め方

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ストレスチェック後の産業医面談の進め方は、主に以下の通りです。

  1. 高ストレス者の選定と面談対象者の判定
  2. 高ストレス者(面談対象者)へ産業医面談の申し出を推奨
  3. 高ストレス者(面談対象者)の情報共有
  4. 産業医面談の実施
  5. 就業上の措置
  6. 結果報告書の提出

それぞれ解説します。

参照元:厚生労働省|面談の具体的な進め方と留意点

1. 高ストレス者の判定

ストレスチェックの結果を回収し、項目ごとに点数を計算して高ストレス者を判定します。数値基準に基づき高ストレス者を選定する方法には以下の2つがあり、衛生委員会で審議した上で選択するとよいでしょう。

合計点数法・点数が高いほど高ストレス
・簡単に集計できる
素点換算法・点数が低いほど高ストレス
・尺度ごとにストレス度合いを把握できる
・計算方法が複雑

参照元:数値基準に基づいて「高ストレス者」を選定する方法

高ストレス者の選定方法については「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」を参考にしてください。

2. 高ストレス者へ産業医面談の申し出を推奨

ストレスチェック実施者は、高ストレス者と判定され産業医面談が必要と判断された従業員に対し、面談を申し出るよう推奨します。ただし、面談を申し出た場合ストレスチェックの結果が事業者に提供されるため、ストレスチェックの結果の回収について、本人から同意が得られていない場合は、推奨できません。

面談を申し出ると、ストレスチェックの結果が事業者に提供される旨を、あらかじめ説明しておくことが望ましいです。

3. 高ストレス者の情報共有

高ストレス者から産業医面談の申し出があった場合、事前に情報共有します。ストレスチェックを実施する前の勤務状況など、主な項目は以下の通りです。

  • 対象者の氏名・年齢・所属部署・役職など
  • ストレスチェックの結果
  • 労働時間
  • 休憩時間数
  • 深夜労働の回数・時間数
  • 業務内容
  • 作業の負荷・労働密度
  • 事業場の職場環境
  • 職場巡視で得られた情報
  • 定期健診の結果
  • 担当医から質問された内容

産業医面談には守秘義務があることを伝えておくと、従業員から情報を提供してもらいやすくなるでしょう。

4. 産業医面談の実施

従業員と調整した日程で、産業医面談を実施します。産業医は従業員から話を聞き、ストレスの程度、業務との関連性などを評価します。

従業員がリラックスした状態で会話できるよう、周囲の目が気にならない場所を選ぶことが適切だと言えます。事業場内での面談が難しい場合、外部の貸会議室やオンラインも選択肢の1つです。

5. 就業上の措置

面談の結果、従業員に対して就業上の措置が必要だと判断した場合、産業医は事業者に対して意見を伝えます。

事業者は、産業医からの意見を踏まえ、労働時間の短縮や業務内容の見直し、労働負荷を軽減するための措置を講じることが望ましいです。産業医から従業員にセルフケアの方法をアドバイスをしたり、事業場外の医療機関を紹介したりするなどの措置も考えられます。

6. 結果報告書の提出

ストレスチェック後の産業医面談が終わったら、所轄の労働基準監督署へ結果報告書を提出します。結果報告書は、以下、厚生労働省のサイトで作成できます。

参照元:厚生労働省「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」

上記サイト内の「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」をクリックすれば、簡単に作成可能です。

複数月にわたってストレスチェックを行った場合、最終月を記載します。提出時期は、各事業場における事業年度の修了後など、各自で設定します。

5.ストレスチェック後の産業医面談の注意点

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ストレスチェック後の産業医面談の注意点は、以下の4つです。

  • 従業員からの申し出後、速やかに行う
  • 産業医面談は強制できない
  • ストレスチェックの結果は5年間保管する
  • 罰則に問われる可能性がある

それぞれ解説します。

従業員からの申し出後、速やかに行う

ストレスチェック後の産業医面談は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とするため、従業員からの申し出後、速やかに行うことが望ましいです。産業医面談は、申し出があってから1ヶ月以内に実施するとよいでしょう。

ただし、事前の情報やストレスチェックの結果により、早急に就業上の措置を講じる必要があると産業医が判断した場合は、できるだけ早い日程を従業員に提示することが適切だと考えられます。

産業医面談は強制できない

産業医面談はあくまで従業員の任意で行われるものであり、強制はできません。従業員が面談を拒否した場合、事業者が実施することは難しいでしょう。

とはいえ、高ストレス者の状態によっては、産業医が医療機関を受診するよう推奨するケースも考えられます。事前に従業員に産業医面談について詳しく説明するなど、面談を受けやすい環境を整えておくことが望ましいです。

また、産業医面談以外の相談窓口の案内に関する情報提供もしておくとよいでしょう。

ストレスチェックの結果は5年間保管する

ストレスチェック結果は、集団ごとに集計・分析結果した後、事業者が5年間保存しなければなりません。結果は、書面・データいずれかで保管し、第三者が閲覧できないような配慮が必要です。

罰則に問われる可能性がある

ストレスチェックに関する労働基準監督署への報告を怠った場合、労働安全衛生法100条の違反となり、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。(労働安全衛生法第120条

ただし、50名未満の事業場については、報告の義務はありません。
参照元:厚生労働省|労働基準監督署への報告

メンタルヘルスサポートのご案内はこちらをご覧ください。メンタルヘルスサポートのご案内はこちらをご覧ください。

6.オンラインでの産業医面談の留意点

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対面での産業医面談が難しい場合、リアルタイムでやり取りができる環境が整っていれば、オンラインでの産業医面談も活用できます。

オンラインでの産業医面談の実施に関する考え方や留意事項は、「情報通信機器を用いた労働安全衛生法第66条の8第1項及び第66条の10第3項の規定に基づく医師による面談の実施について)」に示されています。

オンラインで産業医面談を実施する際の、主な留意点は以下の通りです。

  • 事前にオンラインでの面談方法について従業員に周知しておく
  • 面談環境を整備し従業員のプライバシーに配慮する
  • 事業場と面談前に事前にテストしておく(繋がらない場合の連絡先の確保)
  • 表情・身振り・声などが確認でき、情報セキュリティが確保されたツールを選ぶ
  • 緊急時の対応が可能な体制を整えておく

特に、メンタルヘルス不調者など、希死念慮があるような場合には特に慎重に対応するよう心がけましょう。

オンラインで面談を行う際、使用する機器やアプリは、具体的に指定されていません。上記留意点を踏まえ、ZoomやTeamsなどのWeb会議システムや、SNSのビデオ通話機能など、従業員と産業医双方が使い慣れたツールを選ぶとよいでしょう。
参照元:オンラインによる医師の面談を実施するにあたっての留意事項

7.(まとめ)ストレスチェック後の産業医面談を行い、生産性を高めよう

常時50人以上の事業場では、年に1回以上のストレスチェックが義務付けられています。ストレスチェックの結果、高ストレス者と判定された従業員からの申し出があった際、産業医面談を行うことが求められます。

産業医面談によって、ストレスが高い従業員の心身の状態を把握し、必要な就業上の措置を講じることで、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防止でき、それが組織の生産性やパフォーマンスの向上につながるでしょう。

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