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産業医の意見書とは?作成される場面や記載内容、法的効力の有無について解説


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産業医の意見書とは、産業医面談の際に作成される、産業医の意見や助言をまとめた書類のことです。事業者は、産業医の意見書をもとに、従業員が安全かつ健康的に働ける体制や環境を整える必要があります。

本記事では、産業医の意見書について、記載内容や役割、意見書が作成される場面や法的効力の有無について解説します。意見書を従業員の安全や労働環境の整備に役立てられるよう、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. 産業医の意見書とは
  2. 産業医の意見書に記載される内容
  3. 産業医の意見書が作成される5つの場面
  4. 産業医の意見書の法的効力
  5. 産業医の意見書についてよくある質問
  6. まとめ:従業員の健康を守るために、産業医の意見書を活用しよう

1.産業医の意見書とは

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産業医の意見書とは、産業医の意見や助言を記載した報告書のことです。産業医が従業員に対して面談を実施し、その結果、就業上何らかの措置が必要と判断された場合に作成されます。

なお、事業場で常時働く従業員が50名未満の場合は、産業医の選任義務がないため、産業医意見書ではなく「医師意見書」と呼ばれることもあります。

産業医は医療機関を受診する必要性や就業上必要な措置、就業可否の判断、改善すべき点などを意見書にまとめ、事業者に提出します。事業者は意見書の内容を参照し、従業員の状態をふまえて適切な措置を講じることが求められます。

産業医の意見書が果たす役割

産業医の意見書は、主に以下のような場面で参考になります。

  • 就業制限や休業の際の判断
  • 職場環境の整備
  • 復職者支援

事業者は、従業員の病気や怪我の予防、悪化防止のために、勤務時間や勤務体制、業務内容等を調整したり職場環境を整える必要があります。医学的知見を持つ産業医の意見書を参考にすることで、従業員の適切なサポートや労働環境の整備につながります。

産業医の意見書と主治医の診断書との違い

産業医の意見書と主治医の診断書との違いは、作成にあたっての視点です。

産業医の意見書は、「業務を遂行する上で従業員の体調やメンタルヘルスに問題はないか」という視点で作成されます。産業医は、従業員との面談を通じて、従業員の症状・就業状況・就業意欲・生活リズム・適応能力などを確認し、所見をまとめます。

更には、会社側から得た情報を元に、上司・同僚など周囲との関係などの職場環境要因も考慮します。

一方、主治医の診断書は主に「日常生活を送る上で問題はないか」という視点で作成されるものです。病名、病状や治療経過、今後の治療予定などを診断書にまとめます。

両者は視点が異なり、どちらも参考にする必要があります。従業員の安全と健康を守るため、主治医や産業医と連携をしながら、就業上の措置や休職・復職判断を決定するとよいでしょう。

2.産業医の意見書に記載される内容

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産業医の意見書には、面談の結果や従業員の状態を受けて、以下のような内容が記載されます。

  • 就業区分(通常勤務、就業制限、要休業)
  • 就業上必要とされる措置
  • 職場環境で改善すべき点
  • 医療機関を受診する必要性

就業区分の内容と就業上の措置は、以下の通りです。

就業区分内容就業上の措置
通常勤務通常通りの勤務で問題ない-
就業制限労働時間の変更や業務内容の調整など、就業に何らかの制限が必要勤務による負荷を軽減するため、労働時間の短縮、出張の制限、時間外労働の制限、労働負荷の制限、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数変更、昼間勤務への転換 など
要休業休業する必要がある療養のため、休暇や休職により、一定期間勤務させない

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断実施後の措置について」

3.産業医の意見書が作成される5つの場面

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産業医の意見書が作成される場面は、以下の通りです。

  1. 長時間労働の従業員への面談実施時
  2. ストレスチェックにおける高ストレス者への面談実施時
  3. 健康診断における有所見者への面談実施時
  4. 従業員の休職・復職判断時
  5. 従業員から面談の希望があった際
  6. その他、事業者への助言

産業医の意見書は、産業医面談が実施される際に必要に応じて作成されるものです。ここでは、産業医の意見書が作成される5つの場面をそれぞれ解説します。

1.長時間労働の従業員への面談実施時

従業員が長時間労働に陥っており、疲労の蓄積が認められる場合、産業医による面談を実施して意見書が作成されます。

長時間労働は、脳・心臓疾患の発症やメンタルヘルス不調と関連性が高く、従業員の心身の健康に影響を及ぼすリスクが懸念されます。そのため、長時間労働による疲労の蓄積が認められる場合は、疾患を防ぐために産業医面談を実施することが義務づけられています。

事業者は、意見書の内容を参考に当該従業員に対して必要な措置を講じたり、長時間労働を防げるよう職場環境を改善したりすべきです。

面談の対象者

産業医による面談の対象者となるのは、以下の3つの条件を満たす従業員です。

  • 労働時間が週40時間を超えている
  • 1ヶ月あたり残業80時間を超えている
  • 疲労の蓄積が認められている
  • 本人から面談の申し出があった

ただし、当該従業員が1ヶ月以内に面談を受けており、再度面談を受ける必要はないと産業医が判断した場合、面談を実施する必要はありません。

2.ストレスチェックにおける高ストレス者への面談実施時

ストレスチェックによって高ストレス者と判定された従業員に対する産業医面談でも、意見書が作成されます。

事業者は、高ストレス者のうち面談を希望する者に対して産業医面談を実施しなければなりません。(医師でも可)

産業医が面談でチェックするのは、従業員のストレスや疲労の度合いなどです。そして、医療機関を受診する必要性や就業上必要な措置、改善すべき点などを意見書にまとめ、事業者に提出します。

事業者は意見書の内容を参照し、従業員の状態をふまえて適切な措置を講じることが必要です。

なお、高ストレス者に対する面談については、該当する従業員が希望する場合は必ず実施しなければなりません。面接を希望した日から1ヶ月以内に実施することが望ましいでしょう。

3.健康診断における有所見者への面談実施時

健康診断の結果を受けて産業医による面談が行われる際も、意見書が作成されます。

健康診断や面接指導において、心身の現在の負担状況を評価して健康管理を実施する上での区分を管理区分といい、診断区分・就業区分・指導区分の3区分があります。

就業区分(通常勤務・就業制限・要休業)の判定は産業医の必須業務ですが、診断区分・指導区分に関しては他の医療職での実施も可能です。

就業判断にあたって事業者は、健康診断実施日から3ヶ月以内に、有所見がある従業員について意見を聴取します。そして、従業員に対して就業上の措置が必要な場合は、当該従業員に産業医面談の機会を設けなければなりません。その際に従業員の健康状態や生活習慣に関するヒアリングや、生活習慣を改善するための保健指導などを行うこともあります。

また、再検査や治療が必要な従業員にそれらを勧めることを目的として、面談が行われる場合もあります。医療機関を受診するハードルが高いと感じ、再検査や治療をしないまま放置してしまう従業員は少なくありません。そこで、受診のハードルを下げたり重要性を説明したりするために、面談が実施される場合があります。

健康診断の実施義務と種類

事業者は安全配慮義務に基づき、従業員に対して医師による健康診断を実施する義務を負います。たとえ従業員が1人であっても、健康診断の実施が必要です。

事業者に実施が義務付けられている一般健康診断には、以下の種類があります。

健康診断の種類対象の従業員実施時期
定期健康診断常時使用する従業員(特定業務従事者を除く)1年に1回
雇入時の健康診断常時使用する従業員雇入時
特定業務従事者の健康診断労働安全衛生規則第13条第1項第2号で規定される業務に常時従事する従業員特定業務への配置換えの際、6ヶ月に1回
海外派遣従業員の健康診断海外に6ヶ月以上派遣する従業員海外に6ヶ月以上派遣する際、帰国後、国内で業務に就かせる際
給食従業員の検便事業に付属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する従業員雇入時配置換えの際

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~従業員の健康確保のために~」

4.従業員の休職・復職判断時

従業員が病気や怪我、メンタルヘルス不調を原因に休職する際や、休職していた従業員が復職する際などは、産業医の面談により意見書が作成されます。

具体的には、以下の3つのタイミングで産業の面談が実施されます。

タイミング実施内容
休職前主治医による診断書や病状の確認
休職期間中治療状況や回復の経過の把握悩みや不安への対応
従業員から復職の申し出を受けた後主治医による診断書の確認職場復帰の意思があるかの確認治療や回復状況、日常生活に問題がないかの確認

休職や復職の最終判断は、主治医や産業医ではなく事業者が行います。

ただし、当該従業員が休職すべきか、復職しても問題なく働けそうか、どのような就業条件で復職を受け入れるべきか、復職を受け入れる環境(上司・同僚など)などについては、主治医の診断書や産業医の意見書をもとに慎重に判断することが大切です。

5.従業員から面談の希望があった際

従業員から面談の申し出を受けた場合も、産業医は面談を実施し就業上の措置などが必要な場合に意見書を作成します。

体調の変化やメンタルヘルス不調などが原因で、従業員が面談を希望することもあるでしょう。

従業員の状態によっては、時短勤務や部署移動など、就業上の措置を講じなければならない場合もあります。これらを事業者が適切に判断するために、意見書の内容が参考にされるのです。

4.産業医の意見書の法的効力

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産業医の意見書に法的効力はありません。そのため、事業者は必ずしも意見書の内容通りに就業上の措置を講じる必要はありません。

ただし、意見書を無視し、何ら措置を講じることもなく従業員に健康被害が出てしまった場合は、安全配慮義務違反に問われる可能性があります。

また、意見書の作成から一向に改善が見られない場合は、従業員の健康管理などについて勧告を受ける場合があります。勧告は労働安全衛生法で定められた産業医の権利であり、事業者は勧告を受け入れなければなりません。

産業医の意見書に法的効力はないものの、従業員が健康かつ安定的に働けるようにするためには、意見書の内容を参考にしましょう。

5.産業医の意見書についてよくある質問

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ここでは、産業医の意見書についてよくある質問を3つ紹介します。

  • Q.産業医の意見書の保管期間は?
  • Q.主治医の診断書と産業医の意見書に相違があったらどうする?
  • Q.産業医の意見書のテンプレートは事業者が用意すべき?

Q.産業医の意見書の保管期間は?

A.産業医の意見書は、労働安全衛生規則第52条の6により、5年間保管することが義務付けられています。労働基準監督署の検査が実施された際に意見書が適切に保管されていないことが判明すると、罰則の対象になる可能性があります。意見書は、紙媒体または電子データとして5年間保管しましょう。

参考:e-Gov法令検索「昭和四十七年労働省令第三十二号 労働安全衛生規則」

Q.主治医の診断書と産業医の意見書に相違があったらどうする?

A.主治医の診断書と産業医の意見書に相違がある場合は、従業員の状態、職場環境などを考慮し、従業員の健康と安全により配慮した総合的な判断をすることが必要です。

例えば、主治医と産業医のどちらかが療養が必要と判断している場合は、安全配慮義務の観点から療養させるのがよいと考えられます。

また、主治医や産業医と連携することで、それぞれの意見への理解や意見のすり合わせが可能になることもあります。個人情報の保護や取り扱いに留意しながら連携を図りましょう。

Q.産業医の意見書のテンプレートは事業者が用意すべき?

A.意見書をより有効活用するためには、意見書のテンプレートを事業者側が作成しておくのがおすすめです。

もちろん、産業医の意見書は産業医が作成します。しかし、テンプレートを作成することで、就業上の措置や職場環境改善の際に必要な情報が抜けてしまうのを防げるのです。

以下は、厚生労働省が公開している「長時間従業員、高ストレス者の面談に関する意見書」に関するフォーマットです。テンプレートを作成する際の参考にしてください。

厚生労働省「長時間従業員、高ストレス者の面談に関する報告書・意見書作成マニュアル」

まとめ:従業員の健康を守るために、産業医の意見書を活用しよう

産業医の意見書とは、従業員に対して産業医面談を実施した結果、就業上の措置や職場環境改善などが必要な場合に、産業医の意見や助言を記載する報告書です。

具体的には、以下のような場面で作成されます。

  • 長時間労働の従業員への面談
  • ストレスチェックの高ストレス者への面談
  • 健康診断後の面談実施時
  • 従業員の休職・復職判断時
  • 従業員から面談の希望があった際
  • その他の助言

産業医は、産業保健や労働衛生などに精通した、事業場の健康を守る心強い味方です。産業医の意見書を参考に、就業上の措置を講じたり、労働環境を改善したりしましょう。

従業員が健康かつ安全に働けるように働ける環境を整えるためには、信頼できる産業医をパートナーにすることが大切です。当社は、700名以上の産業医が登録する、産業医選任サポートサービスを提供しています。

当社では、企業と産業医の連携をサポートするコーディネーターがいるため、意見書の運用ややりとりをスムーズに実施していくことが可能です。また、意見書の活用や安全衛生委員会の充実など、労働安全衛生の取り組みを強化している企業事例も豊富なため、企業様にあった運用や環境を一緒に作り上げていくことも可能です。

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