災害に備えるフェムアクション ~災害時の女性固有の困難に備える意味とは~
企業では地震や台風・大雨に備えたBCPの一環として備蓄品の購入や買い増しを積極的に進めています。 社員の安全衛生を守るための重要な備蓄品ですが、そこに性差の視点が必要なことをご存知でしたか?
さんぎょうい株式会社では、2023年7月11日に「災害に備えるフェムアクション」と題したセミナーを開催して二人の女性経営者から「災害時の女性固有の困難に備える意味」についてお話いただきました。
株式会社オカモトヤ 代表取締役社長 鈴木美樹子さん(以下:鈴木)
株式会社オカモトヤは、虎ノ門で1912年に設立された「鈴木紙文具店」を発祥とするオフィス環境構築 を行う商社。
さんぎょうい株式会社 代表取締役社長 芥川奈津子さん(以下:芥川)
さんぎょうい株式会社は、産業医の先生方とともに企業の健康管理を支援する会社で、2019年から女性の健康とキャリアの支援も行っている。
目次
企業は災害にどう備えるべきか
[芥川]災害に備えるという意味では、企業のBCP以前に、まずもって個人が自分の命は自分で守る自助の意識を持つことが大切です。多くの人が災害時への備えが必要なことを分かっていながら実際には行動できていません。会社の施策もまずは個人が備える意識を持つことに繋がることが必要だと思います。
[鈴木]東日本大震災で企業の災害復旧のお手伝いをさせていただきましたが、その際に十分な対策ができていなかった企業が多くありました。
実は弊社も例外でなく、自社ビルが旧耐震基準のままでした。余震が続いたときには、大ガラスが落ちて通行人に被害が出たらどうしようかと思いました。今でも震災の映像をみるとあのときの光景がフラッシュバックします。そこで社員ばかりでなく周辺で働き生活する人々を守るためにもと考えて大規模耐震工事を実施しました。
人はどうしても時が経つにつれて喉元過ぎればということに陥りやすくなります。
出張時や帰宅困難時など一つ一つのシチュエーションに応じた対策をたてて、それを社員にトレーニングするなど、危機意識を風化させない取り組みが重要だと思います。
日常的に、女性は男性にはない生物学的な特性によって身体的な困難に直面することがあります。例えば、月経による不快な症状や更年期症状による身体的・精神的な影響は、多くの女性が経験するものです。これらの特性が、大規模な災害などによってオフィス待機を数日間余儀なくされる際には、さらに困難を増幅させることとなります。このような状況では、辛い体験だけでなく、安全衛生面での問題も懸念されます。 しかし、平均的な企業では、災害時の備蓄を検討する際に性差を考慮することはほとんどありません。 そこで、企業がこれらの困難に対処するために備えることは、女性従業員の安全と健康を守るだけでなく、組織全体の強化にもつながります。性差を考慮した準備をすることで、従業員満足度にも良い影響を及ぼし、貴重な人材の定着に良い効果をもたらすことが期待されます。
災害用レディースキット
[鈴木]オカモトヤでは、以前から企業に防災備蓄品を供給していました。あるとき、女性が多く働いている工場をもつ企業から女性向けの防災キットを作って欲しいと依頼がありました。それが記憶に残っていて、自分が社長になって女性の活躍をサポートする「フェルネ」というブランドを立ち上げた際に、女性専用の災害時キットをつくることを決めました。
総務の方などが女性に必要な備蓄アイテムを個別に選択して購入・保管するとなるとハードルは高くなります。レディースキットは災害時に1人の女性がオフィス待機をするのに最低限必要なものをセレクトして箱詰めしてあります。さらにオフィス内に置いてあっても違和感がないデザイン、大きさにしました。ファイルボックスと同じサイズになっているので収納もしやすくなっています。
企業の担当者が男性の場合は、男性が生理用品を話題にするとセクハラになるでは?と心配する声があると思います。しかし、予め内容物をセレクトされたキットであれば、そのような心配は軽減されます。
災害用レディースキットには3日間のオフィス待機を可能にする、12種類の衛生用品が入った『3days BOX』と、幅2cmで省スペースな『1day スリム BOX』の2種類があります」
キットの内容は、生理用ナプキン(3days BOXのみ)やショーツ、デリケートゾーンを拭き取って不快感を解消するシート、カイロなど、女性にとって災害時にあると助かるものを選んでいます。
開発にあたっては、社内には女性だけを特別扱いすることを心配する声もありました。それでも、敢えて男性でも使えるアイテムは入れていません。女性には男性にない女性固有の深刻な困りごとがあります。会社の一般的な備蓄では女性にとって決定的に足りないものを、揃えるようにしました。
フェムアクション®
女性の就労人口が増え、女性の活躍がますます期待されていますが、その一方で性差への理解はまだ足りていません。性差理解がいずれの企業にとっても課題となります。
オカモトヤが立ち上げた「フェムアクション®」とは性差による働きにくさを解消するための行動と定義しています。災害用レディースキットの導入も、男性管理職が女性の健康課題を理解することもフェムアクションにあたると考えます。女性がはたらき続けられる社会に貢献するために一歩を踏み出すきっかけになれば良いとの思いから、皆で使っていくものとしてフェムアクションは商標登録されています。同じ想いをもった企業にフェムアクションに参加して欲しいと願っています。
このセミナーのアーカイブ動画はこちらでご覧いただけます。
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【3days BOX 】/【1day Slim BOX 】